今回は、ステロイド軟膏の使い方についてお話します。
あなたは、ステロイド軟膏を使ったことがありますか?
アトピー性皮膚炎や、湿疹など、
ステロイドの入った軟膏を
頻繁に使っている方も多いかも知れません。
「私は一度も使ったことがないと思います」
という方もいるかも知れませんね。
でも、実は、虫さされや、かぶれ、湿疹など
ちょっとしたかゆみに対して使う軟膏にも、ステロイドが入っていることが多いです。
ですから、気付いていないだけで、
ほとんどの方がステロイド軟膏を使ったことがあると思います。
ステロイド軟膏を病院や薬局でもらうとき
「このお薬は強いので、体には塗っても大丈夫です。
でも、顔には強すぎるので塗らないでくださいね。」
と説明されたことはあるでしょうか?
アトピーなどで、頻繁に皮膚科に通っている方ですと
聞いたことがあるかも知れません。
これは、軟膏の「吸収量」が体の場所によって違うからなんです。
基本的には皮膚の厚さの違いからくるものです。
「かかと」に塗るときと「お顔」に塗るのでは、
「お顔」の方がたくさん吸収しそうなイメージは何となくつくかもしれません。
では、実際にどれくらいの違いがあるのでしょうか?
ステロイド軟膏を体の色々な部分に塗り、
その後の尿中への排泄量を測定した、
Feldmannらによる1974年の海外の報告があります。
まず、「前腕の内側」を基準とします。
「前腕」とは、「二の腕」と「手首」の間の部分のことです。
「内側」とは、手のひらと続いている側、つまり日焼けしにくい側のことです。
この「前腕の内側」にステロイド軟膏を塗ったときの吸収量を「1」とします。
それとくらべると・・・他の部分の吸収量はどれくらいでしょうか?
一覧表にまとめてみましょう。
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頭皮 :3.5
頬 :13.0
首 :6.0
わき :3.6
背中 :1.7
前腕 :1.1
(外側)
前腕 :1.0(基準)
(内側)
手のひら:0.83
陰嚢 :42.0
足首 :0.42
足の裏 :0.14
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となります。
どうでしょうか。
「わき」では3.6倍・・・
「首」では前腕の6倍・・・
「頬」では13倍・・・
そして男性の「陰嚢」部分ではなんと42倍・・・
も塗り薬が吸収されやすいんですね。
逆に、「足の裏」は皮が厚いため、「前腕」の約10分の1の吸収率です。
皮膚科医はこの倍率を頭にいれたうえで、
塗り薬を出します。
ですから、
「そういえば手の湿疹にだされたお薬がまだ
残っていたので、頬のかゆみに塗っちゃえ」
「これ以前もらった塗り薬だけど、どこに塗るのに
もらったのか忘れちゃった・・・。まぁいいや、首に塗っちゃえ」
という判断が、ちょっと危険であることがわかっていただけるかと思います。
一時的に塗るだけならまだ良いかも知れませんが
長期的に塗り続けると副作用が出る可能性が非常に高まってしまいます。
どうぞご注意ください。
また、この倍率は、
ステロイド以外のお薬でも同様の結果が認められています。
ステロイド軟膏はもちろん、
ステロイド以外の軟膏を塗るときの目安にもなります。
自分に関係のありそうな部位の倍率だけでも良いので
覚えておくと役立つと思います。