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「ステロイドで皮膚が黒くなる」は本当か?(その2)

『「ステロイドで皮膚が黒くなる」は本当か?(その2)』

■前回のあらすじ

前回は、

「「ステロイドで皮膚が黒くなる」は本当
か?(その1)」というお話をしました。
今回は、その続きです。

■「ステロイドで皮膚が黒くなる」は本当
か?(その2)

前回、

「炎症後色素沈着」

のお話をしました。

「皮膚の炎症がおきる」⇒「炎症が治まる」
⇒「黒くなる」

という流れでした。

これはあくまで人体の自然な現象です。

そして、本来、この炎症後色素沈着は
時間が経つと自然に薄くなっていきます。

では、ここにステロイドを塗ると
どうなるのでしょうか。

ステロイドの主な作用は
「抗炎症作用」です。

ですので、ステロイドを
炎症が起こっている部分に塗ると、
当然、炎症は治まります。

先ほどお話したとおり、炎症が治まると
色が黒く残ります。

つまり、

「炎症がおこる」⇒「(ステロイドを
塗る⇒)治る」⇒「黒くなる」

という訳です。

ところが、さきほどから
ご説明している通り、
炎症が治れば色は黒く残ります。

ですので、結論としては、

「ステロイドを塗ろうが塗るまいが、
 治ればその皮膚は黒くなる」

のです。

これがステロイドに関する
誤解のもとになりました。

ある人が、ステロイドを塗ったあとの
炎症後色素沈着を見て、

「あっステロイドを塗ったら黒くなった!」

と誤解してしまった、というわけです。

例えば。

火事になって、火が壁に燃え移ったとしま
す。

あなたは消火器を使ってどうにか鎮火しまし
た。

しかし、
壁に黒く焦げ目が残ってしまいました。

さて、焦げ目の原因は?

もちろん「火事」です。

これを「消火器のせいで壁が黒くなった」
という人はいないはずです。

「ステロイドで皮膚が黒くなる」と言ってい
る人は、

「消火器を使ったせいで壁が黒くなった」

「消火器さえ使わなければ
 壁は黒くならなかったはずだ」

と言っているに等しいわけです。

しかし、こういった誤解をした人達が
悪いわけではありません。

誤解をしても仕方がない事情があるんです。

■アトピー方の皮膚が黒くなりやすいワケと
は?

そもそも、すべての炎症で
皮膚の色が黒くなるわけではありません。

軽い炎症だったり、短期間の炎症であれば
黒くならずに、もとの肌色に戻ります。

少し黒くなったとしても
すぐに薄くなって消えていきます。

炎症後色素沈着が起こりやす主な要因は
以下の3つです。

(1)炎症が同じ部位に繰り返し起こって
   しまう場合
(2)炎症が長期間続く場合
(3)炎症の度合いが非常に強い場合

ところが、
アトピー性皮膚炎など
慢性的に湿疹を繰り返す病気では、
この3つの要件を
全て満たしていることが多いんです。

アトピーでは、
同じ場所に繰り返し繰り返し
炎症が起きます。

一旦治りかけても、
色が薄くなる前に、
また炎症が起きてしまいます。

しかもそれが数年、数十年に
渡って繰り返すわけです。

炎症後色素沈着が
起こりやすい条件がそろっています。

だから、アトピー性皮膚炎の方に
「皮膚が黒くなった」
というステロイドに関する誤解が
起きやすいのです。

そもそも、湿疹も何もなく、
かゆみもないところに
お薬は塗らないですよね。

炎症が起こるところだからこそ、
そこにステロイドを塗るわけです。

ですので、

「ステロイドを塗るところ」

とは

「炎症が繰り返し起きるところ」

であり、

「そもそも黒くなりやすいところ」

な訳です。

何度も言いますが、
ステロイドを塗ったから
黒くなった訳ではありません。

そこに繰り返し湿疹が出ているので、
皮膚が黒くなってくるのです。

ステロイドを塗っても塗らなくても、
繰り返し湿疹が起きれば
黒くなってしまいます。

インターネットのサイトなどでよく見られる

「ステロイドを塗ったら色が黒くなった」
「塗った部分だけがどんどん黒ずんできた」

という誤解はそこから来ています。

「塗った部分だけが黒くなった」のでは
なく、
「そもそも黒くなるくらい炎症が強い部分に
 ステロイドを塗っている」

というのが事実です。

ですので、多くの方が
誤解をしてしまったのも
仕方がないことだと思います。

私はステロイドを宣伝するつもりも、
擁護するつもりもありません。

お薬は、その副作用を
しっかり理解したうえで、
メリットとデメリットを考慮して、
ケースバイケースで
使用するものだと思います。

むしろ、将来的には

「全くお薬を使用しなくて済む
 健康な世の中にしたい」

とすら考えています。

ただ、ステロイドの副作用に関して
医学的に「?」という、
風説・俗説が少なくないので
そこは正確に把握していく
必要があると思います。

「ミッキーマウスとプーさんのどっちが
かわいいか?」

という議論には、個人それぞれの
見解があると思います。

ただし、ミッキー派の人が

「プーさんの正体って
 実はとっても凶暴なヘビなんだよ!
 だからミッキーの方がかわいいんだよ!」

と言ったら「それは違うんじゃないか」と
ツッコミたくなると思います(笑)

なぜなら「事実」が違っているからです。

そこはミッキー派かプーさん派か
関係ないですよね。

ステロイドに関しても同様です。

ステロイドが「良いか悪いか」「怖い」
と言う議論とは別にに、
「そこは事実が違うんじゃないか」
と思う事が多々あります。

特にインターネットのサイトをみていると
他の皮膚の病気に関しても
「それはちょっと違うんじゃないか?」
と思うことが多いです。

ですので、
今後もそういったことを
このメルマガで取り扱って行こうと思いま
す。

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■今日のまとめ■

それでは簡単に今日のまとめです。

(1)「ステロイドを塗ると色が黒くなる」
   は誤解です。

(2)アトピー性皮膚炎では、湿疹が同じ部
   位に繰り返し炎症が起こるので、
   そもそも色素沈着しやすいです。

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