■「やけどには消毒と乾燥」は常識!?
うっかり熱いストーブに
触ってしまった・・・
3分待ちきれずにふたを
開けたカップめんを
ひっくりかえして熱い
スープを浴びてしまった・・・
沸かしすぎたお風呂に足を
突っ込んでしまった・・・等々、
やけどのきっかけは、日常生活の
あちらこちらに潜んでいます。
「こんなときにはまず、
すぐに冷やすこと」ということで、
洗面器に氷水をはって患部を浸けたり、
冷凍庫から保冷剤を取り出したり――
という経験をされた方も少なくないと
思います。
この「まず冷やす」という行為。
これは正解です。
しかしこの後が問題です。
こうして冷やしたあとは、
「感染しないよう消毒して、
皮膚を乾燥させる」
――というのが、かつては常識でした。
しかし今や、これらは非常識。
むしろこれらはいずれも
「やってはいけない」というのが
常識になっています。
それはなぜでしょうか――。
皮膚が傷つくとその部分の
細胞は死んでしまいますが、
すぐに新しい細胞が生まれてきます。
その新しいたに生まれてきた細胞は
傷を治そうと必死で働き、
そのおかげでいつかその傷も
癒える日が来るのですが、
実は消毒によって、雑菌を
殺してしまうのと同時に、
この新しい正常な細胞まで
殺してしまう、と言われています。
また、人間の体はその60%が
水であるといわれているように、
人間の体をつくっている
ひとつひとつの細胞には
たくさんの水が含まれています。
この水分によって細胞はまさに
みずみずしくいきいきと
活動ができるのですが、
乾燥により水分が抜けてしまった
細胞は、そうした本来の活動が
できなくなってしまい、
人間の体、細胞が本来持っている
再生力・治癒力が損なわれてしまいます。
結果、「消毒」と「乾燥」により、
傷がなかなか癒えにくくなり、
治りが遅くなってしまう。
そう主張する医師が増えてきています。
「お肌に乾燥は大敵」というのは
どなたもご存じのことだと思いますが、
それはやけどをはじめとして、
傷を受けている皮膚にも
同じことがいえるのです。
◆「やけど」の新常識は「洗浄して、潤す」
このようなことから、今では、
やけどは「洗浄して、潤す」のが
常識となっています。
これを「湿潤療法」といいます。
このような治療法が良いというのは、
やけどだけでなく、
切り傷・擦り傷等あらゆる
皮膚の傷、けがにいえることです。
そのほうが治りが早く、しかも
痕が残りにくいか、残っても目立たず、
きれいに治るからです。
冒頭でお話した通り、やけどの場合は
即、冷やすのはもちろんですが、
洗面器に張った氷水ではなく、
「流水」がベストです。
流水によって、傷口の雑菌も
洗い落とすことができるからです。
そして、こまめに保湿効果のある
ワセリンや、軟膏等を塗って、
乾燥を防ぐこと。
かつては「やけどをしたら、入浴NG」
というのが常識でしたが、
今は「入浴(というよりシャワー)OK」
が常識になっています。
むしろ、シャワーを患部にあてて、
できる限り雑菌や、やけどによって
死んでしまった皮膚の組織の残骸を
洗い落とすようにします。
そしてお風呂上りには軟膏を塗ります。
その上には――以前、体液等浸出液を
吸い取るために当たり前のように
使用されていたガーゼは、
皮膚の水分を逃がしてしまいやすいので、
最近では、あまり使いません。
水分が逃げにくい材質のばんそうこうや
ラップで覆って乾燥を防ぎます。
湿潤療法がときに「ラップ療法」
といわれることもある所以で、
このラップはどこにでもある
食品用のラップでOKです。
ただし、患部が広い場合には、
余分な滲出液を逃がしたり、
かぶれを防止したりするために、
びっちり患部全体をラップで
覆うのではなく、一部にあえて
隙間をつくっておくこともあります。
三角コーナーや生ごみ処理に使う、
たくさんの小さい穴があいた
「穴あきラップ」を使うのがベストです。
また、傷口がすでに化膿しているような
場合や、患部が大きく深い場合には、
必ずしもラップ療法で対応できるとは
限らないケースもあります。
化膿を抑えるためにまずは抗生物質の
塗り薬や飲み薬による治療が必要です。
そのあたりの判断は難しい部分が
あるので、やけどをしたら、軽症
だと思っても、まずは病院で診断を
受け、必要・適切な治療法での治療を
行うことをおすすめします。